「アルミの溶接は難しい」とよく言われます。実際、アルミ板金の溶接はステンレスや鉄に比べてひずみや割れ、ブローホールが発生しやすく、薄板では溶け落ちも起こりがちです。この記事では、アルミ溶接が難しい理由を素材特性から整理し、TIG溶接でのひずみ・割れ・欠陥を抑えるための具体的な対策を、薄板アルミ溶接の実績をもとに精密板金加工メーカーの視点で解説します。

アルミ溶接が難しい理由
アルミ溶接の難しさは、アルミニウムという素材そのものの物性に起因します。まず押さえるべきは次の4点です。
- 酸化皮膜の融点が高い: アルミ表面の酸化皮膜(Al₂O₃)は融点が約2,000℃以上と、母材(約660℃)よりはるかに高く、皮膜を除去しないと溶融金属がうまく溶け合いません。
- 熱伝導率が高い: 熱が逃げやすいため、溶接部に十分な熱を入れるには大きな入熱や予熱が必要です。
- 線膨張係数が大きい: 鉄の約2倍膨張・収縮するため、ひずみや変形が出やすくなります。
- 溶融状態で色が変わりにくい: 溶け落ちる直前まで見た目の変化が乏しく、薄板では穴があきやすいです。
アルミとステンレスの加工性・溶接性の違いはアルミ板金とステンレスの違いでも整理しています。溶接方法そのものの基礎は溶接の種類と特徴をご覧ください。
アルミ溶接でTIGが選ばれる理由
アルミ板金の溶接では、交流TIG溶接が主流です。交流の「クリーニング作用」によって溶接中に酸化皮膜を除去できるため、健全なビードが得やすくなります。薄板や精密部品では、入熱を細かく制御できるパルスTIGが有効です。
当社では薄板アルミのTIG溶接に対応し、t1.0mmの装置カバーやアルミパイプフレームのASSY溶接などの実績があります。アルミ板金加工全般はアルミ板金加工のページで紹介しています。

ひずみを抑える対策
アルミは線膨張係数が大きく、溶接の入熱でひずみが生じやすい素材です。現場では次の方法を組み合わせて変形を抑えます。
- 治具での拘束: 溶接治具でワークを固定し、熱変形を物理的に抑えます。
- 仮付け(点付け)の最適化: 全体をバランスよく仮付けしてから本溶接に移ります。
- 対称・分散溶接: 一箇所に熱を集中させず、対称に分けて溶接し収縮を相殺します。
- 入熱管理: パルス制御や溶接速度の調整で、必要最小限の入熱に抑えます。
形状に応じた治具設計が品質を左右します。パイプ曲げと治具を組み合わせた事例のように、工程全体での作り込みが重要です。
割れ・ブローホールを防ぐ対策
アルミ溶接で起こりやすい代表的な欠陥が、高温割れ(凝固割れ)とブローホール(溶接内部の気泡)です。それぞれ次のように対策します。
| 欠陥 | 主な原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 高温割れ | 母材成分・拘束応力 | 適切な溶加材(A4043/A5356)の選定、拘束の緩和 |
| ブローホール | 水分・油分・水素の巻き込み | 溶接前の脱脂・清掃、酸化皮膜の除去、シールドガス管理 |
| 溶け落ち | 薄板への過大な入熱 | パルスTIG・裏当て・速度調整 |
とくに前処理(脱脂・清掃・酸化皮膜除去)は、欠陥防止の基本です。溶加材は母材に合わせて選定し、用途に応じて使い分けます。
よくあるご質問
薄いアルミ板でも溶接できますか?
対応可能です。t1.0mm程度の薄板アルミも、パルスTIGと治具によるひずみ管理で製作実績があります。板厚や形状により最適な条件が変わるため、構造を確認のうえご提案します。
アルミ溶接でひずみは完全になくせますか?
ゼロにはできませんが、治具拘束・対称溶接・入熱管理で実用上問題のないレベルまで抑えられます。必要に応じて溶接後の矯正も行います。
溶接跡を目立たなくできますか?
仕上げ研磨やビード処理で外観を整えることが可能です。意匠面の要求度に応じて仕上げ方法をご相談ください。
アルミ溶接・板金加工はオーディーケーにお任せください
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