アルミ板金をレーザーで切ろうとして「反射して切れない」「切断面が黒ずんで溶接前にひと手間かかる」と困った経験はないでしょうか。アルミは光をよく反射し熱も逃げやすいため、レーザー切断では素材と設備の相性が品質を左右します。この記事では、アルミ板金のレーザー切断・抜き加工について、ファイバーレーザーとCO2レーザーの違い、対応板厚やアシストガス、タレットパンチとの使い分けを、加工現場の視点で解説します。
アルミのレーザー切断はなぜ難しいのか
アルミは、レーザー切断の対象としては扱いにくい素材です。理由は2つの物性にあります。
- 反射率が高い: アルミは光・熱・レーザー光をよく反射します。反射したレーザー光が加工機を傷めるおそれがあり、とくに高反射の純アルミ系では加工が安定しにくくなります。
- 熱伝導率が高い: 熱が素早く逃げる(鉄の約3倍の熱伝導率)ため、切断部にエネルギーを集中させにくく、条件が合わないと溶融して切断面が荒れます。
こうした理由から、波長が長く高反射材に熱が伝わりにくいCO2レーザーはアルミ切断に不向きとされてきました。アルミのレーザー切断が一般的になったのは、ファイバーレーザーの普及によるものです。アルミと相性の良い素材選定はアルミ材質の選び方もご覧ください。
ファイバーレーザーがアルミ切断を変えた
ファイバーレーザーは波長が短く金属への吸収率が高いため、アルミや銅といった高反射材の切断に適しています。CO2レーザーと比べてエネルギー効率は約3倍、加工速度は約5〜6倍と高く、省エネと生産性の両面で優れます。

対応板厚にも差があります。CO2レーザーでのアルミ切断はt0.1〜6.0mm程度が目安で切断面の仕上げを要することが多い一方、ファイバーレーザーはt10.0mm程度まできれいに切断できます。高出力機(10kW級)では板厚25mmまで美しい仕上がりを実現する例もあります。両者の違いを整理します。
| 項目 | ファイバーレーザー | CO2レーザー |
|---|---|---|
| 高反射材(アルミ・銅) | ◎ 適する | △ 不向き |
| エネルギー効率 | CO2の約3倍 | 基準 |
| 加工速度 | CO2の約5〜6倍 | 基準 |
| アルミ対応板厚(目安) | t10mm程度(高出力で25mm) | t0.1〜6.0mm程度 |
| 薄板の歪み | 抑えやすい | 出やすい |
アシストガスと切断面の品質
レーザー切断では、切断部に吹き付けるアシストガスが切断面の品質を左右します。ガスには溶融した金属を吹き飛ばし、レンズを冷却してスパッタ(飛散物)の付着を防ぐ役割があります。アルミ板金では、選ぶガスによって後工程の手間が変わります。
- 酸素切断: 酸化反応の熱を利用して切断します。切断面に酸化皮膜ができるため、溶接や塗装をする場合は皮膜の除去が必要になります。
- 窒素切断(無酸化切断): 酸化を抑えて切断するため、切断面が清潔で光沢があり、溶接・塗装をそのまま行えます。アルミの切断では窒素アシストが定番です。
切断後に溶接や表面処理を予定している場合は、無酸化切断を選ぶことで工程を短縮できます。表面処理の詳細はアルミ板金の表面処理をご覧ください。
レーザー切断と抜き加工(タレットパンチ)の使い分け
板金の切断・穴あけには、レーザー切断のほかにタレットパンチプレス(金型で打ち抜く抜き加工)があります。どちらが適するかは、形状・板厚・数量で判断します。

| 項目 | レーザー切断 | 抜き加工(タレットパンチ) |
|---|---|---|
| 形状の自由度 | 高い(自由形状) | 金型形状に依存 |
| 対応板厚(目安) | 厚板まで対応(〜30mm級) | 3mm程度まで |
| 切断面 | なめらか | バリが出やすい |
| 多数の同一穴・量産 | 条件により時間増 | 高速・低ランニングコスト |
| 成形(バーリング等) | 不可 | 金型で可能 |
自由な形状や厚板、なめらかな切断面が必要ならレーザー、同じ穴を多数あける量産やバーリングなどの成形を伴うなら抜き加工が向きます。両者を1台に統合したレーザー・パンチ複合機を使えば、製品ごとに機内で工法を使い分けて費用対効果を高められます。当社ではレーザー加工を含むアルミ治具の複合加工のように、工程を組み合わせた製作に対応しています。
材質による切断のしやすさの違い
同じアルミでも、材質によって切断のしやすさは変わります。純度の高いA1050(純アルミ系)は軟らかく反射率も高いため、強度と加工性のバランスがよいA5052に比べると切断面がやや粗くなる傾向があります。薄板であれば実用上気にならない範囲ですが、仕上がりを重視する場合は材質と板厚に応じた条件設定が重要です。材質ごとの特性はアルミ材質の選び方で解説しています。