特注台車の製作を検討しているものの、耐荷重・キャスター・材質といった仕様をどう決めて伝えればよいか、迷っていないでしょうか。特注台車の仕様には決める順番があり、「用途→サイズ→耐荷重→材質→キャスター」の順に整理すると、過不足のない1台にまとまります。この記事では、医療機器や食品工場向けの特注台車を手がける当社が、仕様決定の手順と、材質・キャスター選定の判断基準を解説します。
特注台車が選ばれる場面|市販品との違い
市販の台車は価格と入手性に優れる一方、サイズ・耐荷重・材質のラインナップが決まっています。運ぶ物や現場の条件がそこから外れると、「載らない」「通らない」「錆びる」といった不都合が日常的に起こります。特注台車が選ばれるのは、まさにこの領域です。
具体的には、搭載する機器の形状に合わせた固定構造が欲しい、洗浄・消毒に耐えるステンレス製が必要、作業高さに合わせて天板高さや昇降機構を作り込みたい、といったご要望です。当社へのご依頼で多いのは医療機器と食品工場の分野で、医療機器台車の製作事例や全長2200mmのステンレス昇降台車のように、用途に合わせて1台ずつ設計・製作しています。

特注台車の仕様の決め方|5つのステップ
仕様の検討は、次の順番で進めると迷いません。後のステップは前のステップに依存するため、順番を守ることが近道です。
Step 1. 用途と運ぶ物(何を・どこで・誰が運ぶか)
Step 2. サイズ・形状(天板寸法・全高・通路やエレベーターの制約)
Step 3. 耐荷重(積載物の最大合計重量+余裕)
Step 4. 材質・表面処理(使用環境に応じて選定)
Step 5. キャスター(重量・外径・ストッパーの有無)
あわせて、最初の段階でご予算と納期を共有いただくことをおすすめします。当社がご依頼時に必ず確認するのもこの2点です。というのも、予算と納期によって材質や構造の選択肢が変わるため、先に枠が決まっているほど提案の精度が上がるからです。
耐荷重の決め方|合計重量に余裕を持たせる
耐荷重は「積載物の最大合計重量」を起点に、余裕を持たせて設定します。運用中は荷物の偏りや段差乗り越え時の衝撃で、静止時より大きな荷重が局所にかかるためです。設計上は最大積載重量の1.2〜1.5倍程度を見込んでおくと安心です。
注意したいのは、台車の耐荷重が「フレーム構造」と「キャスターの許容荷重」の両方で決まる点です。キャスターは4輪で支える計算にせず、床の不陸(凹凸)で1輪が浮くことを想定して3輪で総荷重を支えられる選定にするのが実務の定石です。フレーム側は、1500mm級ステンレス搬送台車フレームの事例のようにパイプと板金の複合構造で、必要な剛性を確保します。
材質の選び方|SUS304・アルミ・スチールの比較
台車の材質は、使用環境で選ぶのが基本です。代表的な3種類を比較します。
| 項目 | SUS304(ステンレス) | アルミ | スチール+塗装 |
|---|---|---|---|
| 耐食性 | ◎(水・洗浄に強い) | ○(軽度の水気まで) | △(塗膜が傷つくと錆) |
| 重量 | 重い | 軽い(比重は鉄の約1/3) | 重い |
| 強度 | ◎ | ○ | ◎ |
| コスト | 高 | 中〜高 | 低〜中 |
| 主な用途 | 医療・食品・洗浄環境 | 搬送負担の軽減・軽量機器 | 屋内一般・コスト重視 |
医療機器や食品工場のように洗浄・消毒がある環境では、SUS304が定番です。薬品や塩分でさらに厳しい条件なら、SUS304とSUS316の使い分けで紹介しているSUS316も選択肢に入ります。
軽さを優先するならアルミです。人が押し引きする頻度が高い現場では、車体の軽さがそのまま作業負担の軽減につながります。アルミデザイン台車の製作事例では、パイプベンダー曲げとTIG溶接で意匠性と軽さを両立しました。強度との兼ね合いはアルミとステンレスの比較も参考にしてください。
屋内の一般環境でコストを抑えたい場合は、スチールに塗装を施す構成が有力です。鉄パイプ+メラミン焼付塗装の医療機器台車のように、塗装仕上げで清潔感と耐久性を確保する方法もあります。

キャスターの選び方|重量・外径・ストッパーの3点
キャスターの候補は膨大ですが、当社がお客様にご説明する際は「積載重量」「車輪外径」「ストッパーの有無」の3点に絞って確認しています。この3点が決まれば、選定はほぼ完了するためです。
第一に積載重量です。前述のとおり総荷重を3輪で支える前提で、1輪あたりの許容荷重を選びます。第二に車輪外径で、大きいほど走行が軽く段差に強くなる一方、全高が上がります。第三にストッパーで、作業中に台車を固定する必要があるか、固定するなら車輪ロックか旋回ロックまで必要かを確認します。
| 車輪外径の目安 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| φ50前後 | 全高を抑えられるが段差に弱い | 軽量物・平滑な床 |
| φ75〜100 | 走行性と全高のバランスが良い | 一般的な工場・施設内搬送 |
| φ125〜150 | 段差・長距離に強く重量物向き | 重量物・床コンディションが悪い現場 |
このほか、車輪の材質(ゴムは静音、ナイロンは耐荷重、ウレタンはバランス型)や、床材への攻撃性も現場によっては効いてきます。使用環境をお聞かせいただければ、仕様に合わせてご提案します。
パイプ曲げから溶接・組立まで一貫対応できる強み
特注台車の製作で意外な壁になるのが、工程の分断です。実際にお客様から、「パイプを曲げるところまでは頼めたが、その後の溶接・組立まではまとめてもらえなかった」というご相談をいただいたことがあります。曲げ・溶接・組立の外注先が分かれると、精度の責任範囲が曖昧になり、納期も伸びがちです。
当社はパイプ曲げ・レーザー加工・曲げ・溶接・組立を社内で一貫対応しています。高さ2000mmのステンレス特殊台車や医療機器台車、工場のタンク移動用台車まで、フレームの曲げから最終組立、塗装・研磨などの仕上げまでを1社で完結できる体制です。溶接時は治具と現物合わせで直角・対角を追い込むため、キャスターの接地が揃った、まっすぐ走る台車に仕上がります。
仕様がすべて決まっていなくても問題ありません。板金設計からの相談体制を整えているため、「運ぶ物と場所だけ決まっている」段階からでも仕様を一緒に詰められます。用途・おおよそのサイズ・運ぶ物の重量が分かれば概算のお見積りが可能ですので、お問い合わせフォームからポンチ絵や現物の写真をお送りください。