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アルミ精密板金の公差・寸法精度|設計の勘所

アルミ精密板金の公差と寸法精度を解説。JIS B 0408の普通公差、線膨張係数による熱の影響、レーザー・曲げ・溶接の工程別精度の目安、過剰公差を避けるコスト設計まで精密板金加工メーカーが解説します。

アルミ精密板金で「図面どおりの寸法に入らない」「公差を厳しく指示したら見積りが跳ね上がった」と感じたことはないでしょうか。アルミは軟らかく熱で伸びやすいため、鉄やステンレスと同じ感覚で公差を考えると精度もコストも狙いどおりにいきません。この記事では、板金の公差を定めるJIS規格の考え方と、アルミ精密板金で精度が出にくい理由、工程別に狙える精度の目安を、現場の知見を交えて解説します。

板金加工の公差はJIS規格で決まる

図面に個別の公差指示がない寸法には、JIS規格の普通公差(一般公差)が適用されます。板金加工で基準となるのがJIS B 0408(金属プレス加工品の普通寸法公差)で、A級・B級・C級の3等級が定められています。等級はAが最も厳しく、Cが最も緩い区分です。

ここで重要なのは、同じ寸法でも「打抜き(せん断)」と「曲げ・絞り」では許容される公差が異なる点です。曲げは戻りや伸びの影響を受けるため、打抜きより公差が大きく設定されています。代表的な区分を抜粋します。

基準寸法 打抜きA級 打抜きB級 曲げA級 曲げB級
6mm以下 ±0.05 ±0.1 ±0.1 ±0.3
6超〜30以下 ±0.1 ±0.2 ±0.2 ±0.5
30超〜120以下 ±0.15 ±0.3 ±0.3 ±0.8
120超〜400以下 ±0.2 ±0.5 ±0.5 ±1.2

このほか、角度寸法にはJIS B 0405、平面度や直角度などの幾何公差にはJIS B 0419(H級・K級・L級)が用意されています。図面で「板金加工なら当然この精度」と思い込むのではなく、必要な箇所にどの等級を指示するかを意識することが、精度とコストの両立につながります。板金の基礎は板金加工とはもあわせてご覧ください。

アルミ精密板金で精度が出にくい理由

アルミは加工しやすい反面、精密な寸法を狙ううえでは固有の難しさがあります。主に4つの要因があります。

軟らかく傷・変形が出やすい

アルミは軟らかいため、搬送や治具のクランプで傷や微小な変形が生じやすい素材です。抜き加工の精度が悪いと、後工程の曲げの伸び(寸法の出方)にも影響するため、工程の最初から精度を作り込む必要があります。

熱で伸びやすい(線膨張係数が大きい)

アルミの線膨張係数は約23.0×10⁻⁶/℃で、鉄(約12.1×10⁻⁶/℃)の約2倍、ステンレス(約17.3×10⁻⁶/℃)より大きい値です。つまり同じ温度変化でもアルミは鉄の約2倍伸び縮みします。たとえば長さ200mmの部品は、10℃の温度上昇で約0.047mm伸びる計算です。±0.05mm級の公差は、加工中や測定時の温度差だけで食いつぶされる可能性があるということです。

加熱で金属が伸びる線膨張のイメージ

スプリングバックと反り

アルミは曲げた後に元へ戻ろうとするスプリングバックが大きく、薄板では反りも出やすい素材です。曲げ角度や寸法を安定させるには、材質と板厚に応じた金型・加工条件の作り込みが欠かせません。曲げの詳細はアルミの曲げ加工で解説しています。

溶接による歪み

熱伝導が高いアルミは溶接で歪みやすく、溶接後の寸法精度が課題になります。当社では入熱管理と治具固定、加工順序の工夫でひずみを抑えており、t1.0mmのアルミ薄板装置カバーのような薄板でも精度を確保しています。歪みを避けたい場合は溶接以外の接合方法を選ぶ設計も有効です。

工程別に見るアルミ板金の加工精度の目安

板金の精度は、どの工程・設備で加工するかで変わります。一般的な目安を整理します(実際の保証値は形状・板厚・数量により異なります)。

曲げ工程が増えるほど寸法公差が累積するイメージ
工程・項目 狙える精度の目安 補足
レーザー切断(機械精度) ±0.07前後 自由形状を高精度に切断
レーザーの穴位置 ±0.02前後 金型不要で微調整しやすい
タレットパンチの穴位置 ±0.1前後 金型による打抜き
曲げ(標準) ±0.1前後 形状が単純な場合
曲げ(多工程・複雑形状) ±0.15前後 工程が増えると累積
スポット溶接後 ±0.2前後 熱と加圧の影響を含む

このように、切断・穴あけは高精度を出しやすい一方、曲げや溶接を挟むほど公差は積み上がります。曲げ工程を挟む穴位置などは、±0.15〜±0.20程度を見込んで設計すると現実的です。精度の要となるレーザー切断・抜き加工はアルミ板金のレーザー切断・抜き加工で詳しく解説しています。

過剰な公差指示はコストを押し上げる

精密板金で見落とされがちなのが、「念のため」で全寸法に厳しい公差を指示すると、コストが大きく膨らむという点です。公差を一段厳しくすると、加工順序の追加、検査の強化、治具の専用化が必要になり、歩留まりも下がります。

コストを抑えるコツは、機能上どうしても精度が必要な勘合部や取付穴にだけ厳しい公差を指示し、それ以外はJISの普通公差に委ねることです。図面の意図を共有いただければ、精度が必要な箇所を一緒に切り分け、過剰品質を避けたご提案ができます。コストダウンの考え方は板金加工のコストダウン設計もご覧ください。

よくあるご質問

アルミ板金で出せる一番厳しい公差はどのくらいですか?
箇所と工程によります。レーザー切断や穴位置では±0.02〜±0.07程度の高精度が狙える一方、曲げや溶接を挟む寸法はそれより公差が大きくなります。図面の要求箇所を確認し、現実的に保証できる範囲をお伝えします。
図面に公差を書かないとどうなりますか?
個別指示がない寸法には、JIS B 0408などの普通公差が適用されます。どの等級で加工するかは取り決めによって変わるため、精度が重要な箇所は等級または個別公差を明記いただくことを推奨します。
アルミは鉄より精度が出しにくいですか?
傾向としては配慮すべき点が多い素材です。軟らかく傷つきやすいこと、線膨張係数が鉄の約2倍で熱の影響を受けやすいことが主な理由です。素材特性を踏まえた治具と加工順序で精度を作り込みます。
温度で寸法が変わるほどシビアな部品も対応できますか?
対応の考え方をご提案できます。測定環境の温度管理や、勘合部の公差設計、材質選定まで含めて検討します。使用環境と要求精度をお知らせください。

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