アルミ板金の組立で「溶接するとカバーが反ってしまう」「ステンレスのボルトを使ったらアルミ側が腐食した」といった経験はないでしょうか。アルミは溶接の難度が高く、薄板筐体では歪みが品質を左右します。この記事では、アルミ板金の接合方法のうち溶接以外の選択肢(リベット・かしめ・接着・圧入ナット)を、特徴とコスト、そしてアルミ特有の電食対策まで、精密板金加工の現場知見を交えて解説します。
アルミ板金で溶接以外の接合が選ばれる理由
アルミは溶接ができない素材ではありませんが、鉄やステンレスに比べて難度が高く、薄板では歪みやすい点が課題です。理由は素材の物性にあります。
- 融点が低い: アルミの融点は約660℃で、鉄(約1540℃)やステンレス(約1400℃)より大幅に低く、溶け落ちやすい素材です。
- 熱伝導率が高い: 熱伝導率は鉄の約3倍あり、入れた熱が部材全体へ素早く逃げるため、薄板では反りやひずみが発生しやすくなります。
- 酸化皮膜の融点が高い: 表面の酸化皮膜(アルミが空気と反応してできる薄い膜)の融点は約2000℃と母材より1300℃以上高く、溶接の障害になるため除去が必要です。
そのため、装置カバーや筐体のように外観と寸法精度を両立したい製品では、熱を加えない機械的接合が有効な選択肢になります。当社でもt1.0mmのアルミ薄板装置カバーのように、入熱管理と治具でひずみを抑える工程設計を行いますが、用途によっては溶接そのものを避ける設計が最適です。アルミ溶接の難所はアルミ板金溶接の難所でも解説しています。
アルミ板金の溶接以外の接合方法
代表的な機械的接合・接着の方法を、特徴と適用場面ごとに整理します。

リベット接合・かしめ
リベット接合は、重ねた板に下穴を開け、リベットを通して先端を潰して締結する方法です。「穴を開ける・頭を潰す」の2工程で済み、熱を一切加えないためひずみが出ないのが最大の利点です。かしめ(板そのものを塑性変形させて固定する加工)も接着剤を使わず、塗装板や異種材料の接合に対応できます。一方で、リベットの凸部が目立つため意匠面には不向きで、留めしろの確保で設計変更が必要になる場合があります。
ブラインドリベット
ブラインドリベットは、JIS B 0147で「片側方向だけで締め付けられる締結部品」と定義される部材です。工具で中心のマンドレル(軸)を引き、ボディを変形させて締結します。片側からしか手が入らない箱物や筐体でも施工でき、振動で緩みにくくトルク管理が不要な点が強みです。下穴はスリーブ外径+0.1〜0.2mm程度が目安です。材質はアルミ・スチール・ステンレスから選べ、打ちやすさを優先するならアルミ製が向きます。
ヘミング(あざ折り・ヘム曲げ)
ヘミングは、板の端を180°折り返して潰す加工です。端部のバリを隠して安全性と意匠性を高めつつ、薄板を補強できます。自動車のドアやボンネット、家電外装の縁処理に多用されます。ただしアルミは曲げで割れやすくスプリングバック(曲げた後に戻ろうとする現象)も大きいため、板厚に応じたR管理が欠かせません。アルミの曲げの勘所はアルミの曲げ加工をご覧ください。
セルフクリンチングファスナー(圧入ナット)
セルフクリンチングナットは、下穴を開けた母材にプレスで圧入するだけで安定した強度を得るねじ部品です。ナットを溶接しづらいアルミ板でも、板厚0.3mm程度の薄板から取り付けでき、仕上がりが美しいのが特長です。繰り返し着脱する蓋やパネルの締結に適しています。
構造用接着剤
構造用接着剤は、接合面の面積が大きく応力集中を緩和できるため、剛性やシール性、防食性の向上に寄与します。とくにアルミと鋼など異種材料の接合に有効で、板を薄くして軽量化を図るマルチマテリアル設計で重要性が増しています。硬化時間や面の脱脂など管理項目はありますが、点で留めるリベットと面で支える接着を併用する設計も実用的です。
ボルト・ナット/インサートナット
分解・メンテナンス性が必要な箇所では、ボルト・ナットやインサートナットによる締結が選ばれます。設計の自由度が高い反面、振動で緩みやすいため、緩み止めや締結トルクの管理が前提になります。
接合方法の比較
主な接合方法の特徴を一覧にまとめます。
| 接合方法 | 熱ひずみ | 外観 | 分解 | 向く用途 |
|---|---|---|---|---|
| リベット・かしめ | なし | 凸部が出る | 不可 | 筐体・カバー・量産 |
| ブラインドリベット | なし | 凸部が出る | 不可 | 片側施工の箱物 |
| ヘミング | なし | 良好 | 不可 | 外装の縁処理・補強 |
| 圧入ナット | なし | 良好 | 可(ねじ) | 薄板のねじ締結 |
| 構造用接着 | なし | 良好 | 不可 | 異種材料・シール |
| ボルト・ナット | なし | 頭部が出る | 可 | 分解・保守が必要な箇所 |
| (参考)TIG溶接 | 大きい | ビードが出る | 不可 | 強度・気密が必要な構造 |
アルミ板金の接合で注意すべき電食(異種金属接触腐食)
アルミの接合で見落とされがちなのが、異種金属を組み合わせたときの電食(ガルバニック腐食)です。これは、電位の異なる金属が接触し、水分や塩分が介在することで卑(いや)しい側の金属が優先的に腐食する現象です。

金属のイオン化傾向では、アルミは鉄・ニッケル・銅より卑な側に位置します。そのためアルミ筐体にステンレスや銅のボルトを使うと、ボルト周囲のアルミが白い腐食生成物で盛り上がり、塗装が浮くといった不具合が起きやすくなります。リベットでも「母材と同じ金属の組み合わせが基本」とされるのはこのためです。
主な対策は次のとおりです。
- 母材とファスナーを同系金属でそろえる(アルミ母材にはアルミリベット等)
- 絶縁ワッシャーや樹脂、塗装で異種金属どうしを直接接触させない
- アルマイト処理や防食塗装で表面を保護する
表面処理による保護はアルミ板金の表面処理でも解説しています。使用環境(屋外・塩害・湿潤)をお知らせいただければ、接合方法と防食を含めてご提案します。
用途別の接合方法の選び方
どの接合方法が適するかは、製品に求める条件で判断します。代表的なケースを整理しました。
| こんな場合は | おすすめの接合 | 理由 |
|---|---|---|
| 薄板で歪みを避けたい | リベット・かしめ | 熱を加えず精度を保てる |
| 片側からしか作業できない | ブラインドリベット | 片側施工が可能 |
| 後で分解・点検したい | 圧入ナット+ボルト | ねじで着脱できる |
| 異種材料を軽くつなぎたい | 構造用接着 | 面接合で応力を分散 |
| 気密・強度を最優先 | 溶接 | 連続した接合で剛性が高い |
実際には板厚・数量・外観・コストを含めた総合判断になります。コストを抑える設計の考え方は板金加工のコストダウン設計もあわせてご覧ください。当社はアルミの板金加工・溶接からリベット組立まで社内一貫で対応し、複合溶接・組立によるアルミ筐体など多様な構造の製作実績があります。